2023年の新語・流行語大賞 年間大賞に『アレ(A.R.E.)』 トップテンは『生成AI』など

12月1日、「2023 ユーキャン新語・流行語大賞トップテン」が発表された。

年間大賞には、38年ぶり2度目の日本一に輝いた阪神タイガースの今年のスローガンでもあり、優勝の秘訣とも称された「アレ(A.R.E.)」が選ばれた。

年間大賞に野球関連の「ことば」が選出されるのは10回目で、3年連続で選出されるのは初。これまで野球関連では、94年「イチロー(効果)」、95年「NOMO」、96年「メークドラマ」、98年「ハマの大魔神」、99年「雑草魂」、15年「トリプルスリー」、16年「神ってる」、21年「リアル二刀流/ショータイム」、22年「村神様」が選出されてきた。

「新語・流行語大賞」は、1年の間に発生したさまざまな「ことば」の中で広く世間の目・口・耳をにぎわせた、その年を代表する「ことば」を選ぶ賞で、今年は「推しの子」、「ちょんまげ小僧」といった若者を中心に流行したものや「生成AI」「チャットGPT」など技術面で注目を浴びたものなど30の「ことば」がノミネートされ、この中からトップテンとして10の「ことば」が発表された。

トップテンには、同じく野球関連の「ことば」として、WBCの1次ラウンド東京ブールにおいてヌートバー選手が注目されるきっかけとなった「ペッパーミル・パフォーマンス」、若者を中心に話題となった言葉として、個性豊かなダンスで人気を集めた「新しい学校のリーダ―ズ」や、好意をもっている相手に対してふとした行動で冷めてしまう「蛙化現象」などが選ばれた。

選考委員特別賞には、とにかく明るい安村さんの「I’m wearing pants!(アイム・ウェアリング・パンツ)」が選ばれた。

トップテンに選出された「ことば」の解説は、次の通り。

【新しい学校のリーダ―ズ / 首振りダンス】「個性や自由ではみ出していくー。」のモットーのとおり、ダンス&ボーカルユニットのひとことではおさまらない、自ら行うパワフルな振り付けや表現力豊かなパフォーマンスで人気をさらった女性ロックバンド。楽曲『オトナブルー』で披露される「首振りダンス」は今年TikTokで人気を集め、SNS総フォロワー数1400万人オーバー、国内女性アーティストの第一位を獲得、アメリカのフェスにも参加し、成功を収めた。

【アレ(A.R.E.)】プロ野球・阪神タイガースが日本シリーズを制し、1985年以来38年ぶり2度目の日本一となった。今年のチームスローガンを「A.R.E.(えーあーるいー)」とし、「アレ=優勝」への強い決意を表明した。そして、日本シリーズでの優勝インタビューにおいて、岡田彰布監督は「何とか達成できたので、アレのアレを」と敵地の京セラドーム大阪を沸かせた。

【OSO18/アーバンベア】今年は、統計開始以来最多となるほど人がクマに襲われる被害が相次ぎ、日頃クマとは縁のない地域にも、クマの脅威が知れ渡った。その中でも、牛を襲う特異的な行動や人間には姿を見せず、罠は見抜いてかからない、OSO18とコードネームをつけられ、凶暴で知能の高いクマの新種かと恐れられた。また、市街地周辺に恒常的に住み、白昼堂々、人家に出没するアーバンベアの存在も認識された。自然環境が変わり人間の生活も変われば、野生生物の生態が変わるのは当たり前だという自然の脅威を知らしめた。

【蛙化現象】好意を持っている相手のことがふとしたきっかけでいやになってしまう「急に冷めちゃう」現象。人とはマスク越し、非接触で過ごしたこの4年余り、SNSでのコミュニケーションで膨らんだ妄想とリアルな生身の人間との触れ合いとのギャップが、グリム童話『かえるの王さま』をたとえに広がったといえる。SNSで簡単にブロックをかけてしまう今風の人間関係が映し出された言葉ともいえる。

【生成AI】問いかけるとすぐさま答えてくれる。物語やレポート、イラスト、デザインまでも作り出す魔法のような生成AI「ChatGPT」に飛びついたユーザーは世界で1億人を超えた。生成AI はあくまで過去のデータを読み込んで吐き出す仕組みである。したがって、従来「パクリ」は著作権侵害はもとより職を失うおそれさえある恥ずべき行為だったはずだが、学習する元ネタが膨大であればあるほどできる成果物の仕上がりはよくなる。

【地球沸騰化】2023年夏、世界は強烈な暑さに見舞われ、ヨーロッパでは熱波で死者が出たり、森林火災が相次いだ。日本でもこの夏、最高気温35℃以上の「猛暑日」の日数が最多となり、日本近海の海面水温は過去最高を記録した。食卓の様子が変わってくること、そして命の危機を実感した年だった。

【ペッパーミル・パフォーマンス】2023年3月9日、WBCの1次ラウンド東京プールが開幕した。2戦目の対韓国戦、韓国の3点リードで迎えた3回裏、ラーズ・ヌートバー選手のねばりにねばったセンター前のヒットで日本はこの回で4点を奪い返した。そんなヌートバー選手の人気に火をつけたのが、自身がセントルイス・カージナルスで行っていたパフォーマンスを「たっちゃん」を歓迎しようと侍たちが取り入れた、ペッパーミル・パフォーマンスだ。その後、ファンの間でも広まり、観客席や家庭で実物のペッパーミルを手に応援する人も現れた。

【観る将】2023年10月、藤井聡太八冠が誕生した。数々の記録を塗り替えてきたことで、将棋というニッチな世界ながら藤井ファンは幅広い。この藤井人気とともに新しい層に間口を広げたのは、AIだ。AIが示すグラフは熱戦を可視化し、AI世代、YouTube世代の解説陣による見せ方もうまく、指す人だけの楽しみだった場に最先端技術を取り入れたことで増した将棋界の勢いと、「ライブ」で行われている現場に立ち会って応援したいというサポーター的感情の相乗効果で「観る将棋」という新しい将棋の楽しみ方が定着した。

【闇バイト】近年、「オレオレ詐欺」や「振り込め詐欺」などの特殊詐欺の増加傾向が続いているが、これらの犯罪を実行し、検挙された人の多くが学生や若者といった、経済的な困窮や楽に稼げるからとSNSで高額求人に気軽に応募したアルバイトだという。こういった闇バイトは、首謀者は携帯電話やSNSで指示するだけで、自分は全く現場に出ずに、人を簡単に使い捨てるというものであり、市民がスマホ一つで強盗殺人まで犯す、SNSは凶器になってしまったといわざるをえない。

【4年ぶり/声だし応援】2023年春、試合会場に声を出しての応援が戻ってきた。大相撲、プロ野球、Jリーグなどで、大きな声で、肩を組み飛び跳ねて応援するファンの躍動で4年ぶりに熱いスポーツが息を吹き返した。声なし応援は、打球音が聞こえる、力士のぶつかる生音が聴けるといった、うれしい発見があり、手拍子やボードといった大きな声を出すことがためらわれる人々も堂々と応援できる形も浸透したが、無観客試合を経験した関係者やファンは心ゆくまで「推し」の活躍を応援できる喜びに浸ったことだろう。

最新の情報はで提供中